5月21日夕方、東京・小金井市で芸能活動をしていた大学生(20歳)の女性が男に刃物で刺され、意識不明の重体になった。 男は彼女のファンだったとみられ、警視庁は男を傷害の疑いで逮捕し、詳しいいきさつを調べている。

この事件を聞いて、こんな昔話を思い出した。

『例のお客さん週3で来るようになったからそろそろヤバイと思う』オキニさんは、またやっちゃったみたいな顔でため息をついた。 彼女に熱を入れてたちょっとテンションが変なお客さんの一人が頻繁に店に通うようになったのだ。一度、店に来れば最低でも1万円以上はかかるわけで、このペースだと一ヶ月十数万円以上 使うことになる。普通のサラリーマンが使う額としては多すぎる。客が借金して首が回らなくなって暴発したり、ストーカー化する前に彼女は客に「もう店には来ないで」と告げたうえで『出入り禁止』にしなければならない。

というわけで、今回も口説きネタはないけど、今回の事件でちょっと思ったことを書きます。

凶悪なストーカーへ

キャバクラや風俗などでは、客が"勘違い"しやすい。あくまで女性は仕事として接しているのだが、女性経験の少ない男性の中には、彼女たちの優しさをつい自分への好意 と捉えてしまうこともある。 客が借金をしてまで店に通うようになったり、執拗にメールを送ってきたり、店の前で待ち伏せするようになるともう手遅れで、 ストーカーになってしまうことも少なくない。

だから、危なさそうな客は早めに切り捨てるのが、自分の身を守る方法のひとつだ。

実際はそれほどトラブルは多くない。そもそもキャバクラは料金が高いし客の年齢層も高いので、ある程度の常識を持った大人が集まる場所なのだ。 口説けなくて「いくらお前に使ったと思ってるんだ!」とキレる客は絶えないが、通う店が変わるだけで、ストーカーにはなりにくい。 なんせ店内でおかしなことがあれば怖いお兄さんがやってきてドヤシつければ大抵の客は怯んで店に来なくなる。 キャストも"危なさそうな客"は経験としてわかるので、最初から距離をとりがちで、"あくまで仕事として接している"というそっけない態度をとる。 まあ中には客を破滅寸前までひっぱって、危なくなれば他店舗へと転々とする強者もいるのだが・・・。

実は"危なさそうな客"はキャバクラや風俗よりも素人っぽい女性を集めたパブ・スナックの方が多い。1時間2、3千円でTAXもかからず低料金で飲めて、 ホステスの年齢も若くて素人っぽい女の子を集めた店。客の年齢層もぐっと若くなる。 私が昔通っていたパブ・スナックには結構な数の「出禁」をくらった客がいた。 女の子に暴言を吐いたり、しつこくメールアドレスを聞いたり、自分だけ特別扱いを要求したり、様々な迷惑行為をする客である。 女の子が身近な存在に感じられれば感じられるほど客は"勘違い"しやすいのだ。

一方、現実には悲惨な事故も起きている。
「耳かき嬢刺殺事件」
2009年8月3日午前8時50分頃、東京都港区西新橋の民家で、江尻美保さん(当時21歳)と祖母の鈴木芳江さん(当時78歳)が襲われる事件が発生。2人は顔や首などを刃物で刺され、鈴木さんはその場で死亡、江尻さんは意識不明の状態で病院に搬送されたが1ヶ月後の9月7日に死亡した。事件発生当時に現場にいた会社員の男(当時41歳)が逮捕された。 江尻さんは東京都秋葉原の耳かき専門店で働く、いわゆる耳かき嬢であった。勤務していた店舗でナンバー1の人気嬢であり、多い時は1ヶ月に65万円の収入を得ていた。一方、被疑者の男は2008年2月からこの耳かき専門店に通い始め、この江尻さんを指名し続けて店に通う頻度が上がり、最終的に同店で少なくとも200万円以上を費やした。2009年4月5日、被疑者は江尻さんに店外で会うことを要求したとして店を出入禁止となり、その後、江尻さんにストーカー行為をするようになった。江尻さんが拒否を続けることで、被疑者の江尻さんに対する愛情が憎悪に変わり、8月3日、被疑者は、果物ナイフ、包丁、ハンマーを準備して江尻さんの自宅を訪れ、応対した鈴木さんを1階の玄関先で刺した後、2階にいた江尻さんを刺した。

接触型アイドル商法の危険性

今回の事件の被害者の彼女は、アイドルというよりも元々女優で、役でやっていたアイドル企画ユニットでCDを一枚出して、その後は女優とシンガー・ソングライターとして活動して いたので、いわゆる地下アイドルではなく、犯人もかなり狂信的で異常な男で、一般的な地下アイドルのドルオタ支援者が暴走したのとは異なる。 「地下アイドルの交流イベント」での事件でもないし、地下アイドルの現場特有の問題でもない。なのに当初TVでは「地下アイドルの話」として取り扱われた。

結局「オタク」が悪いみたいな流れにしたいTV局にはイラッとするが、この事件がネットでも地下アイドルと結びつけて語られたり、現役アイドルが反応するのは、 やっぱりみんなが思ってる"会いに行けるアイドル"の危険性を感じているからだと思う。 現在の地下アイドル商法は同じような事件が起きる可能性を否定できないし、いつ起きても不思議ではない。 "会いに行けるアイドル"というコンセプト自体が、凶悪なストーカーを生み出す要因になる側面を助長しているのではないか?

今回の事件をうけてとあるアイドルのツイートが感慨深いと話題になった。

全く以て実に正論ではあるのだけれど、残念ながらそれが通じない人達がいるからこういう事件が起きる。
"会いに行けるアイドル(接触型アイドル)"というコンセプトを打ち出すと、 ファンがアイドルに求めるものがライブパフォーマンスや歌のうまさやルックスだけではなくなる。 現実的な接触の機会のハードルが極端に下がると 求めるものがファンに対する"対応の良さ"へと変化する。握手してくれる、会話が出来る、ツーショットで写真が撮れる、Twitterでリプをくれる、自分の名前を覚えてくれる・・・。

だから、「ファンはアイドルをアイドルとして見て、アイドルとして扱うのが大事です。1人の女の子、女性としてみてはいけないと思う。」 のは無理がある。 より擬似恋愛的なイベントで集客を狙う地下アイドルビジネスモデルが定着しているのに、そこにファンの常識・良識を問うのは限界がある。 運営側もそれを十分に認識しながら色々な"仕掛け"をしてお金を落としてもらうわけだ。もうキャバクラとあんまり変わらないじゃないか? 実際には彼女たちの活動を支えているのが、ごく数名のドルオタという小規模な地下アイドルも少なくない。 彼女たちにとってファンが離れていくのは死活問題なわけで、"対応の良い女の子"を演じなければならない。 そこで"勘違い"するなってのも・・・。

キャバクラなら"勘違い"する客は切ってしまえばいい。客はいくらでもいる。だが、地下アイドルはそういうわけにもいかない。 おかしなファンや迷惑をかけるファンは出禁にすればいいが線引きが難しい。イベントには必ず顔を出し、給料のほとんどをアイドルに費やすファン も多い。そんなファンの熱意がいつしか歪んだ愛情へと変化するのを見極められるだろうか?

さて、こんな事件も起きている。

福岡のローカルアイドルのイベントで、とあるファンが池に飛び込みたった2曲でライブが中止になった。 怒ったほかのファンに対して、池に飛び込んだ本人が土下座したところ、頭を踏まれ、脚立で後頭部を殴られ流血。傷害事件として警察沙汰になり、 アイドルメンバーは大号泣。ライブ後に行われるはずの物販も中止となった。

これも面倒くさい話で、迷惑をかけた男はファンでもなんでもないかもしれないのね。 誰を応援してるわけでもなく、地下アイドルやコスプレイヤーの女の子なんかがいるイベントに顔を出して、みんなにかまって欲しくてちょっと暴れていくっていうマニア。 Twitterで返信がほしくて、誰それかまわず地下アイドル達に@を飛ばしてくるそういう類。 なんだろうなぁ。凄く狭いコミュニティでおかしなことをやってる気もするけど、 こういう人達は居場所がそこにしかなかったりします。

私が知ってるぐらいの結構知名度のあるアイドルグループが、今回の事件があって、しばらくはイベントの際に手荷物検査を行うという報告があったんだけど、 「え!今までやってこなかったのかよ!?」と唖然としました。 こういう現場では「ファンとの信頼」があって、より近くでの接触が可能だったんだとあらためて思うけど、その信頼はちょっとしたことでも結構 簡単に崩れてしまうような危ういもののような気がします。

「アイドルのドキュメンタリー」も結構見てるけど、メジャーな場所に立てる可能性が極めて低い「自称アイドル」が乱立する中で、 ナイフで刺される危険性を感じながらも 彼女たちが何でそこまで頑張れるのか?はもうオッチャンにはわからないのです。

⇒⇒⇒ キャバ嬢を落とすためのメソッド『キャバクラ解体新書』
photo
ゼロから始めるオクテ男子愛され講座
アルテイシア
永岡書店 2015-05-20
売り上げランキング : 4283
評価

by G-Tools , 2016/06/04